あなたは、誰かの大切な人
最後の伝言、月夜のアボガド、無用の人、緑陰のマナ、波打ち際のふたり、皿の上の孤独という、6つの短編からなる本です。どの短編も大人の女性が主人公。フリーランスや女性管理者として生きる女性。一生を独身で過ごす女性、結婚する訳でもなく離れるわけでもなく彼氏がいながら付かず離れずで生きる人。多様化する現代人の人生とその中にある孤独。それでも誰かと心が繋がる幸せを、それぞれの背景で多彩に描いた6つの小説。
著者自身が、フリーのキュレーターで、世界を旅しており、小説の中でもグローバルな視点で話が展開されていたり、また美術的な知識とセンスがさまざまなシチュエーションで生き生きと描かれていたりで、著者にしか書けないような卓越した個性を感じました。秀悦した描写で、さまざまなリアルを描くその力量に、吸い込まれていくような作品集。どれもこれも読後感がとても爽やかです。
この本の中年女性たちの生き様に自分を重ね合わせ、人と繋がるささやかな幸せを、改めて考えさせられました。
『好きな人と一緒に過ごせる幸せを大切にしていきたい』
そう思える一冊です。